
「タイミー」や「シェアフル」といったスキマバイトアプリの普及により、従業員がスキマ時間を活用して副業するケースが増えています。 一方で企業にとっては、副業が「会社にバレる」プロセスや、発覚時のリスクを正しく理解し、予防的に対応体制を整えることが経営課題になっています。 本記事では、人事・総務・法務担当者が押さえておくべき副業リスクの仕組み、最新裁判例、厚生労働省のガイドライン、就業規則整備の実務ポイントを徹底解説します。
💡 この記事でわかること
- 1. 副業はなぜ「会社にバレる」のか?
- 1.1 税務上の仕組み
- 1.2 確定申告の影響
- 1.3 情報流出
- 2. 副業発覚による企業側リスク
- 3. 最新判例から読み解く副業規制の限界
- 4. 厚生労働省ガイドラインから見える方向性
- 4.1 基本姿勢
- 4.2 制限可能なケース
- 4.3 労働時間管理と「管理モデル」
- 4.4 情報公開の推奨
- 5. 就業規則整備の実務ポイント
- 6. まとめ
- 参考|無料でシンプルな給与前払いサービス「パルケタイム」
1. 副業はなぜ「会社にバレる」のか?

副業は必ずしも意図的に会社へ報告されなくても、税務・申告の仕組みや情報の流れから自然に発覚することがあります。企業にとっては従業員管理や情報統制上の大きな盲点です。
1.1 税務上の仕組み
最も多いのは 住民税の通知による発覚 です。 従業員の本業と副業の所得は合算され、市区町村から本業の会社へ「住民税の特別徴収税額通知」が送付されます。副業分を含んだ結果、通常より住民税が高額になることで、副業の存在に気づかれるケースが多くみられます。 注意すべきは、会社に通知されるのは“税額のみ”で副業の詳細ではないという点です。 また、副業が給与所得の場合は原則として特別徴収(会社経由での天引き)となり、住民税額の変化を通じて発覚しやすくなります。自治体によっては「普通徴収(本人納付)」を認める場合もありますが、取り扱いは自治体ごとに異なり、選択できないケースもあるため確認が必要です。
1.2 確定申告の影響
副業で年間20万円を超える所得がある場合、原則として確定申告が必要になります(「収入」ではなく「所得」で判定されます)。とくに複数の勤務先から給与を受け取っている場合は、年末調整されなかった給与とその他の所得の合計が20万円を超えると申告が必要になります。 税務署が会社に副業を直接通知することはありませんが、確定申告や住民税計算を経由して最終的に会社の経理部門が増額分を把握できるため、間接的に発覚する可能性があります。
1.3 情報流出
近年増えているのがSNSや知人を介した情報流出です。 従業員が副業先での様子をSNSに投稿したり、知人の口から社内に伝わったりすることで、会社が把握するケースもあります。これは単なる就業規則違反の問題にとどまらず、情報管理リスクにも直結するため注意が必要です。
2. 副業発覚による企業側リスク
- 就業規則違反・懲戒のリスク
- 労働時間通算リスク
- 情報漏洩・競業リスク
- レピュテーションリスク
就業規則に「副業禁止」とあっても、最新の裁判例では合理性を欠く一律禁止は無効とされる傾向があります。処分の妥当性と同時に「規定そのものの有効性」が争われる可能性があります。
本業と副業の勤務時間は通算され、週40時間・1日8時間を超える場合には労基法に基づく割増賃金が必要となります。長時間労働による安全配慮義務違反のリスクも発生します。
副業が同業他社で行われた場合、競業避止義務違反や営業秘密の流出に直結する恐れがあります。
従業員の副業トラブルが社外に伝わると、自社の信用失墜やブランド毀損につながる可能性があります。
3. 最新判例から読み解く副業規制の限界
- 十和田運輸事件(東京地判 2001年6月5日)
- 東京都私立大学教授事件(東京地判 2008年12月5日)
- マンナ運輸事件(京都地判 2012年7月13日)
年1〜2回程度のアルバイトを理由とした解雇は、本業に実害が認められなかったため解雇無効とされた。
語学学校での副業に従事した教授の解雇について、本業の教育業務に支障がなかったとして無効と判断された。
副業申請を繰り返し不許可とした会社の対応について、一部は合理的とされたが、過度な制限は不法行為とされ慰謝料支払を命じられた。
4. 厚生労働省ガイドラインから見える方向性
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、副業を原則禁止すべきではないと明示し、合理的制限を条件に企業ルールの整備を推進しています。
4.1 基本姿勢
- 原則、副業・兼業を禁止しないことが望ましいと明記。
- 従業員の主体的なキャリア形成を尊重。
4.2 制限可能なケース
- 労務提供に支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩するおそれがある場合
- 競業により自社利益が害される場合
- 名誉・信用が損なわれる場合
4.3 労働時間管理と「管理モデル」
- 本業+副業の労働時間は必ず通算。
- 週40時間・1日8時間を超える労働には割増賃金が発生。
- 本業と副業先の情報連携により、柔軟な通算管理を行う「管理モデル」の導入が推奨されている。
4.4 情報公開の推奨
- 2022年7月改定以降、副業許容条件をホームページ等で公表することが望ましいとされ、透明性確保が推進されている。
5. 就業規則整備の実務ポイント
企業が副業に対応するための就業規則整備は「禁止から容認」への転換が基本路線です。
- 原則容認+合理的制限型へ
- 制限要件の明文化
- 副業届出制・管理モデル導入
- 透明性確保と周知徹底
一律禁止から「例外的に制限する」方式へ転換することで、法的リスクを低減できる。
労務支障・過労・競業・秘密漏洩の4要素を明記して運用する。
副業を許容する場合は、労働時間通算の仕組みを導入する必要がある。
副業方針を就業規則・社内ポータル・HPに公表し、従業員へ周知することが重要。
6. まとめ
スキマバイトなどの副業が会社に露見するのは、住民税通知や確定申告の影響、あるいはSNSを介した情報流出といった仕組みによる自然な流れによるものです。 その結果、企業は規定違反や懲戒処分の妥当性が争点になるだけでなく、労務管理・情報保護・信用維持といった多面的なリスクに直面します。 最新の判例や厚労省ガイドラインを踏まえると、企業に求められるのは一律禁止に頼る旧来型の規律ではなく、合理的な制限要件を明文化し、透明性を確保したうえで副業を容認する方向へシフトしていくことです。副業を完全に排除するのではなく、現実的なリスクを前提にマネジメントの枠組みを整えることが、これからの労務戦略における重要な鍵となるでしょう。
参考|無料でシンプルな給与前払いサービス「パルケタイム」
パルケタイムは給与前払いの福利厚生サービスです。
- 働いた分の給与を好きなタイミングで受け取ることができます
- 企業負担ゼロで最短即日導入できます
- 「日払い」「前払い」をキーワードに訴求し採用力が向上します
🏠 楽しく働くを語るラボ ➡ マネジメント ➡ 【人事・総務必見】タイミー等スキマバイト副業における企業のリスク管理と対応策
おすすめ記事
©️ Parque.Inc