2022年8月1日、国税庁は「副収入300万円以下の場合は原則、雑所得とする」という内容の所得税基本通達の改正案を発表しました。これにより、副業収入に対する実質的な増税がおこなわれる事態が生じています。これは「副業300万円問題」と呼ばれ、意見公募には7000件以上の意見が寄せられるなど大きな話題となっています。それを受けて、2022年10月7日には一部改正(案)が発表されました。 そこで今回は「副業300万円問題」の概要や背景、10月7日に公表された修正ポイントについて紹介します。
💡 この記事でわかること
副業300万円問題とは
今回のポイントは「300万円以下の副業収入は雑所得として扱う」という国税庁が発表した内容です。今まで副業は、明確な判断基準がなく「雑所得」ではあるものの線引きがあいまいでした。
事業所得
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。 ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。 ー 国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
事業所得は青色申告特別控除(最大65万円)が受けられたり、もし収益が上がらず赤字になった場合、一定の順序に従うことで、給与所得など他の所得金額から控除できる損益通算ができます。
雑所得
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。 ー 国税庁 No.1500 雑所得
雑所得は損益通算や繰越控除がないため、もし副業で赤字になっても他の所得金額に控除ができず、また青色申告もできないため節税効果もありません。
改正の背景とは
国税庁は、副業を反対しているのではなく「新分野の経済活動」について、適正申告のための環境づくりに努めており、今回の所得税基本通達の改正も、その一環として実施されました。 つまり、今まで事業所得と雑所得の線引きをあいまいにしていたことで、真面目な納税者もいる中、不正におこなわれていた「節税対策」を阻止することが狙いでもあるようです。
所得税基本通達の一部改正(案)について
意見公募の結果を受け、10月7日に公表された改正通達の修正点を紹介します。
修正後 | 修正前 |
・事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。 | ・事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動
が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定
するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その
所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない
限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。 |
ー 国税庁「所得税基本通達の制定について」
修正後は、副業かは関係なく「記帳・帳簿書類の保存ができているか」で所得区分を重視し判定します。この新ルールは2022年の所得分の確定申告から適用される見通しです。
話題となっているSNSでの声
すでに修正案についてSNSでも安堵の声が多く上がっています。 それだけ注目度が高く、副業されている方もいるということがうかがえる法改正でした。
まとめ
今回は、いま注目を集めている「副業300万円問題」についてご紹介しました。政府は副業を推進する中での改正ですが、一部の不正な節税対策の阻止を目的に実施するのでは、今後も副業に踏み切る人が減ってしまうことも懸念されます。多くの意見公募が反映された一部改定(案)も公表されています。記帳・帳簿書類の保存がポイントとなりますので参考にしていただければと思います。
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