給与支払いの仕組みに、大きな転換期が訪れています。 これまで当たり前だった「銀行口座への振込」に加え、スマートフォンアプリなどを通じて給与を受け取る「デジタル給与」という新たな手段が、制度上も実現できるようになりました。
- デジタル給与の基本と仕組みとは?
- いま注目されている理由と背景を知りたい
- 実際に導入する企業のメリット・注意点ってなに?
制度が整った今こそ、企業として「対応するか、しないか」を見極めるタイミングではないでしょうか。本記事では、デジタル給与の全体像をやさしく解説し、導入判断に役立つ情報をまとめています。
💡 この記事でわかること
- 1.デジタル給与とは?定義と制度の背景
- 1.1 デジタル給与の定義
- 1.2 なぜいま注目されているのか?
- 2.デジタル給与の仕組みと導入条件
- 2.1 利用の流れと制度の全体像
- 2.2 労働者の同意と説明義務
- 3.デジタル給与の導入メリットと活用例
- 4.導入における課題とリスク
- 4.1 安全に使える?セキュリティと資金保全のしくみ
- 4.2 実務運用での課題と注意点
- 5. デジタル給与の今後と制度の広がり
- 5.1 政府も後押し、広がる制度整備
- 5.2 導入企業の事例
- 参考|無料でシンプルな給与前払いサービス「パルケタイム」
- まとめ
1.デジタル給与とは?定義と制度の背景
1.1 デジタル給与の定義
デジタル給与とは、銀行口座を使わずに、スマートフォンのアプリや電子マネーサービスを通じて給与を受け取る仕組みのことです。 これは2023年4月に施行された改正資金決済法により、一定の条件のもとで正式に認められるようになりました。以下が制度上の条件です。
- 厚生労働省の認定を受けた資金移動業者のみが提供できる
- 一人当たりの保有上限は100万円(原則)
- 労働者の同意が必須
- 従来の口座振込と併用可能(全額デジタルでなくてもOK)
1.2 なぜいま注目されているのか?
デジタル給与が注目を集める背景には、時代の変化と社会的ニーズの多様化があり、注目されるのには以下のような理由が挙げられます。
- 外国人労働者の増加
- 口座を持たない就労者への対応が求められている
- 金融包摂(Financial Inclusion)への対応
- 政府が未銀行化層への支払い手段を推進
- Z世代を中心とする若年層の価値観の変化
- 柔軟な給与の受け取り方への関心が高まっている
- 即時払い・福利厚生との連携
- デジタル給与は即時払い制度と相性がよく、人材確保や離職防止策にも貢献
こうした時流に応じ、企業の報酬戦略の一部としてデジタル給与を取り入れる動きが増えています。
2.デジタル給与の仕組みと導入条件
2.1 利用の流れと制度の全体像
デジタル給与の利用には、企業と資金移動業者の契約、従業員の同意、アカウント連携が必要です。また、支払いは原則として、厚労省が認定した資金移動業者を介しておこなわれます。代表的な認定業者は以下の通りです。(2025年4月時点)
- PayPay株式会社(PayPay給与受取)
- 楽天Edy株式会社(楽天ペイ給与受取)
- 株式会社リクルートMUFGビジネス(COIN+)
- auペイメント株式会社(au PAY 給与受取)
【参考】厚生労働省|資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について
2.2 労働者の同意と説明義務
デジタル給与の導入は、企業の一存では実施できません。従業員の事前同意と、十分な説明責任が求められます。そのため、導入にあたっては以下の社内対応が必要です。
- 就業規則や給与規程の整備
- 給与計算ソフトとの対応確認
- 資金移動業者との契約内容の確認
- 労働者への同意取得とFAQ対応
3.デジタル給与の導入メリットと活用例
デジタル給与の導入によって、以下のような企業側の利点が得られます。
- 銀行振込に比べたコスト削減
- 即時払いとの連携で従業員満足度アップ
- 外国人・若年層への対応力強化
- 福利厚生の差別化(柔軟な給与受け取り)
一部企業では、勤怠連携と組み合わせて「働いた日数に応じて即時払い→デジタル給与受取」というフローを導入しています。人材不足に悩む業界では離職率の低下や応募数増加という効果も報告されています。
4.導入における課題とリスク
4.1 安全に使える?セキュリティと資金保全のしくみ
デジタル給与は、現金を直接やり取りするわけではありませんが、一時的に給与を預かる資金移動業者の存在が前提となります。そのため、従業員の給与を守るためのセキュリティや資金保全が非常に重要です。制度では、以下のような保護策が義務づけられています。
- 供託金の積立や保証保険の加入し、倒産時にも給与を返還できる体制
- 残高上限は100万円までとし、リスクを最小限に抑える設計
- 万が一のときに備えた「代位弁済」で給与が失われないようにカバーする制度
このように、安全性は制度として担保されていますが、企業側にも「どのサービスを選ぶか」「従業員にきちんと説明するか」が問われるポイントになります。
4.2 実務運用での課題と注意点
デジタル給与の導入によって、日常業務に新たな手間が加わるケースもあります。
- 銀行振込とデジタル給与の二重管理が必要になる場合がある
- 支払い方法が増えることで、会計処理や勤怠連携の複雑さが増す
- 使用するシステムの仕様変更や追加コストが発生する可能性もある
- 給与計算ソフトと連携できるか?
- 一部支払い・全額支払いなど、社内ルールをどう整備するか?
- 既存業務とどう統合するか?
スムーズな導入のためには、人事・労務・経理部門の連携が不可欠です。段階的な導入や、特定部門だけでの試験運用も効果的です。
5. デジタル給与の今後と制度の広がり
5.1 政府も後押し、広がる制度整備
デジタル給与は、日本政府が推進するキャッシュレス社会・働き方改革の一環として位置づけられています。 現在は限られた資金移動業者のみが認定されていますが、今後はより多くの業者が参入する見込みです。これにより、選択肢の多様化・利便性の向上・料金競争が進み、企業にとって導入しやすい環境が整っていくでしょう。
5.2 導入企業の事例
すでに一部の先進企業では、実証的にデジタル給与の導入が進んでいます。特に、外食・物流・介護など、外国人や非正規労働者が多い業界では、銀行口座不要の利便性が評価され、導入が進んでいます。 このように、業界や従業員の属性によって、導入のハードルやメリットが異なるため、自社に適した導入モデルを検討することが重要です。
参考|無料でシンプルな給与前払いサービス「パルケタイム」
パルケタイムは給与前払いの福利厚生サービスです。
- 働いた分の給与を好きなタイミングで受け取ることができます
- 企業負担ゼロで最短即日導入できます
- 「日払い」「前払い」をキーワードに訴求し採用力が向上します
まとめ
デジタル給与は、給与支払いの多様化とデジタル化を象徴する新たな手段です。法整備も整い、企業側が安心して検討できる環境が生まれています。 一方で、社内オペレーションやシステム面での調整は必要不可欠です。選定・準備・説明責任を丁寧におこなうことで、トラブルを防ぎながら、スムーズに新制度を取り入れられるでしょう。
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