
- 最近、アルバイトの応募者から『給与をPayPayで受け取れますか?』と聞かれて、答えに迷った
- 同業他社が“翌日にPayPayで受け取れる”と打ち出してきて、自社の給与制度に焦りを感じている
そんな声を、現場で耳にする機会が増えていませんか。 2025年3月28日、外食大手の株式会社吉野家は、給与前払いサービスを提供する株式会社エーピーシーズ(マイナビグループ)、およびPayPay株式会社と連携し、吉野家で勤務するアルバイト約2万人を対象に「PayPay給与受取」へ対応したと発表しました。2025年4月給与から対応し、最短で勤務した翌日にPayPay残高で給与を受け取れるようになっています。 出典:PayPay株式会社プレスリリース「吉野家が『PayPay給与受取』に対応」2025年3月28日付
注目すべきは、これが「月次の通常給与を直接PayPayで受け取る」というシンプルなデジタル給与払いではなく、「給与前払いサービス(速払いサービス)」を経由して「PayPay給与受取」に対応するハイブリッドモデルである点です。 本記事では、中小企業の経営者・人事・バックオフィス担当の皆さまに向けて、この仕組みの中身と背景にある制度設計、そして自社で類似スキームを検討する際のポイントを整理してお伝えします。
💡 この記事でわかること
- そもそも「PayPay給与受取」とは?2023年解禁の「デジタル給与払い」を実装したサービス
- 「PayPay給与受取」の仕組み
- 受け取った残高は「PayPayマネー(給与)」
- 吉野家がエーピーシーズ「速払いサービス」経由で「PayPay給与受取」に対応した背景
- これまで吉野家は「速払いサービス」を福利厚生として導入していた
- 「最短勤務翌日にPayPayで受け取れる」インパクト
- 対象は約2万人のアルバイト
- 仕組みの全体像:給与前払い×デジタル給与のハイブリッド構造
- 3社の役割分担
- なぜ「給与前払い経由」というスキームが成立するのか
- 中小企業が学べる4つの示唆
- 示唆1:デジタル給与は「給与前払い」とセットで広がる可能性が高い
- 示唆2:自社システム改修を最小化する「外部サービス活用型」が現実解
- 示唆3:「翌日受取」が新しい採用基準になりつつある
- 示唆4:労使協定の締結等は依然として必須
- 中小企業が「自社で類似スキームを検討する」3つのステップ
- ステップ1:すでに導入している給与前払いサービスの拡張余地を確認
- ステップ2:未導入なら「給与前払い × デジタル給与」をワンセットで検討
- ステップ3:労使協定・同意取得のフローを設計
- まとめ:吉野家事例が示す「給与受取DX」の次のフェーズ
- 関連サービス:給与日払いサービス「hibarai(ヒバライ)」
- hibaraiの主な特徴
- 現場で選ばれている理由
そもそも「PayPay給与受取」とは?2023年解禁の「デジタル給与払い」を実装したサービス

これまで日本の労働基準法では、給与は原則として「通貨(現金)での直接払い」とされ、例外として「労働者の同意による銀行口座等への振込」が認められてきました。そこに新たな選択肢として加わったのが、スマホ決済アプリなどの「資金移動業者の口座」への支払い、つまり「デジタル給与払い」です。
「PayPay給与受取」の仕組み
PayPay株式会社の公式案内によれば、「PayPay給与受取」は、給与をPayPayアカウントで受け取れるサービスです。企業は、PayPayが従業員に設定する「給与受取口座への入金用口座番号(銀行口座番号)」宛てに給与を銀行振込することで、従業員のPayPayアカウントへチャージされる、という設計です。 参照:PayPay株式会社「『PayPay給与受取』について」公式案内
受け取った残高は「PayPayマネー(給与)」
吉野家のアルバイトの方が受け取るのは、「PayPayマネー(給与)」と呼ばれる、給与受取口座で受領した賃金でのみ購入できるPayPayマネー(資金移動業者発行の電磁的記録)です。資金決済に関する法律第43条の規定に基づき、PayPayは利用者に対して負う資金移動残高に係る債務の全額と同額以上の資産を、供託により保全していると説明されています。
吉野家がエーピーシーズ「速払いサービス」経由で「PayPay給与受取」に対応した背景

ここからが今回のニュースの肝になります。
これまで吉野家は「速払いサービス」を福利厚生として導入していた
PayPay株式会社のプレスリリースによれば、吉野家はこれまで、アルバイトを対象にエーピーシーズが提供する「速払いサービス」(給与前払いサービス)を通して給与の前払いを行う福利厚生制度を導入していました。今回の取り組みは、その「速払いサービス」を「PayPay給与受取」に対応させた、という構造です。 つまり吉野家にとっては「給与前払いの仕組みはすでに導入済みで、そこにPayPay受取という新しい受取手段が加わった」というシナリオであり、ゼロから新制度を立ち上げたわけではない、という点に注意が必要です。
「最短勤務翌日にPayPayで受け取れる」インパクト
本サービスを通じて、吉野家のアルバイトの方は「給料日を待たずに希望した日(最短で勤務した翌日から指定可能)」に給与をPayPay残高(PayPayマネー(給与))で受け取れるようになります。受け取った残高は、そのままPayPay加盟店での決済にスムーズに使えるとされています。 この「翌日受取+PayPay決済までシームレス」というユーザー体験は、従来の「月末払い」「銀行口座振込」とは比較になりにくいインパクトがあり、人手不足の外食・小売・サービス業の採用競争に、新しい基準を持ち込む可能性があります。
対象は約2万人のアルバイト
対象規模は、吉野家のアルバイト「2万人程度」とされています。単一企業のアルバイトとしては大規模で、この数字の意味は決して小さくありません。今後もエーピーシーズとPayPayは、ほかの「速払いサービス」利用企業に対しても給与デジタル払いへの対応を進めていく予定だと発表しています。
仕組みの全体像:給与前払い×デジタル給与のハイブリッド構造
中小企業の人事担当者にとって、ここで押さえておきたいのは、「誰が何を担っているのか」という登場人物の整理です。
3社の役割分担
PayPayプレスリリースをもとに整理すると、3社の役割は次のとおりです。
- 株式会社吉野家
- 給与支払いの責任主体(雇用主)
- 株式会社エーピーシーズ(マイナビグループ)
- 給与前払い「速払いサービス」の提供事業者として、必要情報の説明・同意取得・振込実務を業務委託型で担う
- PayPay株式会社
- 指定資金移動業者として「PayPay給与受取」のインフラを提供
エーピーシーズ側は今回の対応にあたり、サービス内で従業員から同意取得できる機能などを新たに実装したと発表しています。
なぜ「給与前払い経由」というスキームが成立するのか
PayPayプレスリリースによれば、エーピーシーズの「速払いサービス」は業界唯一の「業務委託型」で提供されており、「賃金支払いの五原則(全額払い)」等の法的リスクを心配せずに運用できる設計になっていると説明されています。 ここで補足したいのが、「全額払いの原則」とは何か、という点です。賃金支払いの五原則のうち「全額払いの原則」は、企業が労働者に支払うべき賃金を、一部でも一方的に差し引いて支払うことを原則として禁じるものです。したがって、給与前払いサービスを利用する際は、サービス利用手数料を企業側が負担するなどして、「従業員が最終的に受け取る額が1円も減らない」よう配慮することが、労務トラブルを防ぐ鍵になります。エーピーシーズの「業務委託型」設計も、こうした観点を含めて法的リスクを回避しやすく整理されたスキームと位置づけられます。 この既存スキームに「PayPay給与受取」を接続することで、企業側は自社のシステム改修を最小限に抑えつつ、従業員にデジタル給与の選択肢を提供できるというメリットが生まれます。
中小企業が学べる4つの示唆
吉野家の事例から、中小企業の人事・経営層が読み取れる示唆を整理します。
示唆1:デジタル給与は「給与前払い」とセットで広がる可能性が高い
純粋な「月次のデジタル給与払い」を単体で導入するよりも、「給与前払い × デジタル給与」を組み合わせた方が、従業員にとってのメリット(即時受取・キャッシュレス決済への直結)が圧倒的に大きくなります。今後、中小企業の現場で広がるパターンも、このハイブリッド型が主流になっていく可能性があります。
示唆2:自社システム改修を最小化する「外部サービス活用型」が現実解
エーピーシーズのような業務委託型の給与前払いサービスを利用すれば、企業側の労使協定の整備や同意取得運用の負荷を抑えながら、デジタル給与の選択肢を提供できます。「自社で全部やる」のではなく、「すでにある仕組みを組み合わせる」発想が、現実解になりつつあります。
示唆3:「翌日受取」が新しい採用基準になりつつある
吉野家のように「最短で勤務翌日にPayPayで受け取れる」企業と、「月末の銀行振込のみ」の企業とでは、求人市場での見え方が大きく変わります。スポットワーカー・学生アルバイト・外国人材への訴求力という観点で、自社の給与受取手段を改めて見直すタイミングに来ています。
示唆4:労使協定の締結等は依然として必須
PayPayの公式案内でも明記されているとおり、デジタル給与払いを導入するには、「事前に企業と従業員で労使協定の締結等が必要」です。外部サービスを活用しても、この実務工程は省略できません。
中小企業が「自社で類似スキームを検討する」3つのステップ
最後に、中小企業が類似のスキームを検討する際の具体的なステップを整理します。
ステップ1:すでに導入している給与前払いサービスの拡張余地を確認
自社で既に給与前払い(日払い・週払い)サービスを導入している場合は、まず提供事業者に「デジタル給与受取への対応予定」を確認してみることをおすすめします。事業者側で順次対応が進む可能性があります。
ステップ2:未導入なら「給与前払い × デジタル給与」をワンセットで検討
給与前払いを未導入の企業は、給与前払いと従業員のデジタル受取選択肢を「ワンセット」で検討する方が、運用負荷もコストも合理化できます。単体導入よりも、組み合わせ前提で事業者を比較するのが効率的です。
ステップ3:労使協定・同意取得のフローを設計
どの事業者を選ぶにしても、労使協定の締結と従業員ごとの同意取得は避けて通れません。社内のオペレーション設計(誰が同意書を回収し、誰が保管・更新するのか)まで含めて検討してください。
まとめ:吉野家事例が示す「給与受取DX」の次のフェーズ
吉野家のPayPay給与受取対応は、単なる大手企業の話題ではありません。「給与前払い × デジタル給与」のハイブリッドモデルが、中小企業の採用競争のルールを変えつつあることを示すシグナルです。今すぐ着手できるアクションは、次の3つです。
- 自社のアルバイト・パート従業員に「給与受取方法の希望」をヒアリングする
- 既存もしくは新規の給与前払いサービスに「デジタル給与受取対応の有無」を確認する
- 必要に応じて、自社の労使協定・同意取得フローの整備に着手する
大手の動きに後れを取らないよう、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
(執筆時点:2026年5月/本記事の制度内容および各社の対応状況は、今後変更される可能性があります。実際に導入を検討される際は、必ずPayPay株式会社、株式会社エーピーシーズ、および厚生労働省の公式サイトの最新情報をご確認ください。)
関連サービス:給与日払いサービス「hibarai(ヒバライ)」
吉野家事例で活用されている「速払いサービス」(エーピーシーズ・マイナビグループ)と同様、給与前払いサービスの分野には複数のプレイヤーが存在します。当社が提供する「hibarai」は、クレジットカード決済を活用するため企業側の資金立替が不要、初期費用も無料で、全雇用形態に対応する給与前払いサービスです。サービス比較・乗り換えのご検討時は、ぜひ選択肢のひとつとしてご検討ください。
hibarai(ヒバライ)は、働いたその日に給与を受け取れる給与日払いサービスです。
hibaraiの主な特徴
- 勤務当日に給与を受け取れる
- 現金手渡し不要、口座振込で完結
- 企業はクレジットカード決済で対応でき、資金負担を抑えられる
- 給与計算・明細発行まで一元管理
現場で選ばれている理由
- 「日払いOK」が応募の決め手になりやすい
- 現金管理や手渡し業務が不要
- 急な人手確保が必要な現場と相性が良い
警備・物流・飲食など、即戦力が求められる業界では、採用スピードを上げる仕組みとして活用されています。
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