- 最近、求人を出しても応募が集まらない
- 採用してもすぐに辞めてしまう
中小企業のバックオフィスや採用担当の方なら、この悩みにうなずく方も多いのではないでしょうか。 その背景にある構造変化のひとつが、スポットワーク市場の急拡大です。矢野経済研究所が2025年9月24日に発表したプレスリリースによれば、2025年度の国内スポットワーク仲介サービス市場規模は前年度比22.5%増の1,347億円に達する見込みです。市場は2022年度の648億円から、わずか3年で倍以上に拡大しています。 つまり、御社の求人は「もう一つの求人広告」と比べられているのではなく、スポットワークという“別の働き方”そのものと比較されている可能性が高いのです。 本記事では、信頼性の高い一次情報をもとにスポットワーク市場の現在地を整理し、中小企業の経営層・人事担当者が「今週中に検討を始めるべき3つの給与制度の論点」を提示します。
💡 この記事でわかること
- 市場規模1,347億円——矢野経済研究所が示すスポットワーク市場の現在地
- 矢野経済研究所「2025年版 スポットワーク仲介サービス市場の現状と展望」
- スポットワーク協会発表:登録者数は約3,800万人(2025年10月時点)
- なぜ「即日支払い」が応募率に影響するのか——構造的な背景
- スポットワーカーの実態:1回4.6時間、隙間時間で働く
- 「即日もしくは短サイクルで給与を受け取れる」体験が新たな基準に
- 中小企業が今、検討すべき給与制度の3つの論点
- 論点1|「給与の支払いサイクル」を再設計するか
- 論点2|「給与前払い」を導入する場合、自社立替型かサービス利用型か
- 論点3|労務・税務上の論点を整理する
- 実際に動き始めた事例——飲食・小売・人材派遣業界
- 飲食業界:給与受取の柔軟性が応募率に影響
- シニア人材の活用も拡大
- まとめ:今週の人事会議で議論したい3つの問い
- 関連サービスのご紹介
- hibaraiの主な特徴
- 現場で選ばれている理由
市場規模1,347億円——矢野経済研究所が示すスポットワーク市場の現在地
最初に押さえておきたいのが、市場規模の数字とその根拠です。
矢野経済研究所「2025年版 スポットワーク仲介サービス市場の現状と展望」
株式会社矢野経済研究所が2025年9月24日に発表したプレスリリース「スポットワーク仲介サービス市場に関する調査を実施(2025年)」によると、国内スポットワーク仲介サービス市場の規模は次のように推移しています。
年度 | 市場規模 | 前年度比 |
2022年度 | 648億円 | — |
2023年度 | 830億円 | +28.1% |
2024年度 | 1,100億円 | +32.5% |
2025年度(見込み) | 1,347億円 | +22.5% |
この市場規模は、矢野経済研究所が「単発バイト求人情報サービス」「短期バイト人材紹介サービス」「人材マッチングサービス」の3市場を合算して算出しているものです。事業者売上高ベースの数値で、調査期間は2025年4月〜7月、専門研究員による直接面談、電話・メールヒアリング、文献調査を組み合わせた方法で実施されました。 出典:株式会社矢野経済研究所 プレスリリース、2025年9月24日
なお、この数値は「仲介サービス事業者の売上高」であり、スポットワーカーが実際に得る賃金総額ではない点に注意が必要です。それでも、3年で市場が倍以上に拡大した事実は、働き手と企業の双方がスポットワーク仲介プラットフォームに集まり続けていることを示す客観的な指標といえます。
スポットワーク協会発表:登録者数は約3,800万人(2025年10月時点)
需要サイドの数字も見てみましょう。 日本経済新聞は2025年10月24日の記事「利用者急増スポットワーク、これからどうなる?」のなかで、一般社団法人スポットワーク協会の発表として「2025年10月1日時点の登録者数は約3,800万人、過去5年で約3倍に増加」と報じられています。 出典:日本経済新聞 2025年10月24日
ここで注意したいのは、この「3,800万人」は協会加盟事業者の延べ登録人数である可能性が高いという点です。1人が複数のスポットワークアプリに登録しているケースも当然あるため、実働するスポットワーカーの実数とは異なります。 実数に近い推計としては、民間推計として広く参照されているパーソル総合研究所の試算があります(内閣府「令和7年度年次経済財政報告」でも紹介)。これによれば、2025年の全国のスポットワーク就労者数は約452万人、未経験だが利用意向を持つ潜在層は約1,431万人と推計されています。 出典:内閣府「令和7年度年次経済財政報告」(リクルートワークス研究所コラム 2025年12月18日経由)
延べ登録数3,800万人と実就労者数452万人——この2つの数字の差は、「興味は持っているがまだ働いていない潜在層」が国内に1,000万人規模で存在することを示唆しています。スポットワーク市場は、もうしばらく拡大が続く可能性が高いと考えられます。
なぜ「即日支払い」が応募率に影響するのか——構造的な背景
市場拡大の背景にあるのは、単なるアプリの利便性だけではありません。働き手が「給与の受け取り方」に対して、これまでとは異なる期待を持ち始めているという構造変化があります。
スポットワーカーの実態:1回4.6時間、隙間時間で働く
連合(日本労働組合総連合会)が2025年1月23日に発表した「スポットワークに関する調査2025」によると、スポットワーカーの1回あたりの平均勤務時間は約4.6時間(1サービスのみ利用者の平均)でした。
これは、フルタイム正社員のように「月単位で給与をまとめて受け取る」のではなく、短時間の労働の対価をその都度受け取る働き方が広がっていることを意味します。
さらに、MMD研究所が2024年10月22日に発表した「スポットワークに関する調査」では、スポットワークサービスの利用頻度について、「半年に1回以下」17.2%、「週に1回程度」17.0%、「月に2〜3回程度」16.4%という結果が出ています。
利用頻度がバラついているのは、スポットワークが「副業として時々利用する人」「主たる収入源として頻繁に利用する人」と、複数のレイヤーで使われていることを示しています。
「即日もしくは短サイクルで給与を受け取れる」体験が新たな基準に
スポットワーク市場で広く採用されているのは、「働いた当日もしくは数日以内に賃金を受け取れる」仕組みです。一方、多くの中小企業の正社員・アルバイト雇用では、現在も「翌月25日払い」「月末締め翌月15日払い」が一般的です。 この差は、応募者から見ると単なる利便性の違いを超え、「自分の労働の対価がいつ手元に入るか」の予測可能性そのものに関わります。生活費の支払いが月内に集中する若手や非正規雇用層にとっては、給与の支払いサイクルが応募先選択の判断軸のひとつになり得るのです。
中小企業が今、検討すべき給与制度の3つの論点
ここからは、中小企業の経営層・人事担当者が、スポットワーク市場の拡大を踏まえて検討すべき3つの論点を整理します。
論点1|「給与の支払いサイクル」を再設計するか
最初の論点は、現行の月1回払いを維持するのか、それとも別の選択肢を取り入れるのかです。選択肢は大きく3つあります。
- 現状維持(月1回払い)
- 労務管理上もっとも簡便だが、スポットワーク経験者の応募ターゲットとは支払いサイクルにギャップが残る。
- 給与前払いサービスの導入
- 従業員が請求したタイミングで、すでに働いた分の給与を前倒しで受け取れる仕組み。多くは外部サービスを利用する形式で、企業側の資金繰り負担が小さい設計のものもある。
- 給与デジタル払いの導入
- 2023年4月施行の改正労働基準法施行規則にもとづき、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への振込みが可能になった制度。日本経済新聞によれば、厚生労働省が2025年6月6日に明らかにした初年度実績では、2024年度末時点の登録口座は1万7,210件にとどまっています。
3つのうちどれを選ぶか、あるいは併用するかは、自社の従業員構成・職種・キャッシュフロー状況によって判断が分かれます。少なくとも「現状維持で良いか」を一度議論のテーブルに乗せること自体が、今期の人事戦略の重要なステップになります。
論点2|「給与前払い」を導入する場合、自社立替型かサービス利用型か
給与前払いを導入すると決めた場合、次に検討すべきは方式の選択です。一般的に語られている主な方式は次の3つです。
方式 | 仕組み | 主なメリット | 主な留意点 |
自社立替型 | 企業が直接、自社の運転資金から従業員に立替支払い | 手数料が外部に流出しない | 企業のキャッシュフロー負担/給与計算・労務処理の負荷増 |
自社運用+外部システム型 | 計算や申請プロセスをシステム化、立替は自社 | 業務効率化 | キャッシュフロー負担は残る |
外部サービス利用型 | 外部事業者が立替し、企業は通常通り月次精算 | 資金立替が不要/導入負荷が小さい | 手数料の発生/サービス選定が必要 |
中小企業の場合、運転資金に余裕のない事業者が多いことを踏まえると、外部サービス利用型のほうが導入ハードルが低い傾向にあります。最近では、企業が手数料を負担するモデル、従業員が手数料を負担するモデル、両者で分担するモデルなど、設計の柔軟性も広がっています。 ただし、給与前払いサービスは事業者ごとに対応している雇用形態(正社員・アルバイト・派遣など)、対応している給与計算ソフト、手数料水準、立替金の上限などが異なります。自社の運用実態に合うかどうかを、複数社で比較検討することが望ましいでしょう。
論点3|労務・税務上の論点を整理する
給与の支払いサイクルや方法を変えるとき、現場の業務とは別に労務・税務の論点を見落とせません。代表的な確認ポイントは次の通りです。
- 労働基準法第24条の「賃金支払いの5原則」との整合(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上払い・一定期日払い)。給与デジタル払いは、労使協定の締結と労働者本人の同意が法令上の要件となっています。
- 就業規則の変更
- 給与支払い方法を変更する場合、就業規則の見直しが必要となるケースがあります。
- 税務・社会保険上の取扱い
- 給与前払いの場合、原則として「給与の前払い」であり「貸付」ではない設計が一般的ですが、サービスの仕組みによって取扱いが異なります。導入前に税理士・社会保険労務士に確認することを推奨します。
出典:厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)」
これらは制度そのものを否定する材料ではなく、「導入前に専門家に1度だけ相談する」だけで多くの場合クリアできる性質のものです。
実際に動き始めた事例——飲食・小売・人材派遣業界
すでに動き始めている業界もあります。
飲食業界:給与受取の柔軟性が応募率に影響
飲食業界は、もともと採用難が顕在化していた業界です。厚生労働省「雇用動向調査」(令和4年度)によると、宿泊業・飲食サービス業の入職率は25.6%と全産業のなかでも高い水準にあり、同時に離職率も高い「人の出入りが激しい業界」と位置づけられています。 このため、給与受取の柔軟性や即日払い対応は、応募率改善の手段として早期に検討されてきました。タイミーが運営する「スポットワーク研究所」の2025年第4四半期クォータリーレポートによれば、2025年第4四半期の全国スポットワーク募集件数は397.2万件で、前年同期比21.2%増となっています。 出典:スポットワーク研究所「スポットワーク市場・クォータリーレポート【2025年4Q】」、2026年1月30日
シニア人材の活用も拡大
タイミーが2025年9月8日に発表した「シニア世代のスポットワーク利用実態調査(2025年版)」によると、60歳以上の働き手は2025年4月時点で約30.8万人、前年同月比約1.9倍に増加しています。
「給与を即日もしくは短サイクルで受け取れる仕組み」は、若年層だけでなくシニア層の働き手にとっても、「年金以外の収入をその都度確認できる安心感」として機能している可能性があります。給与制度の見直しは、若手採用だけでなく、シニア層・主婦層など多様な人材の受け皿づくりにもつながり得ます。
まとめ:今週の人事会議で議論したい3つの問い
最後に、本記事で紹介したデータと論点をもとに、今週の人事会議でぜひ議論していただきたい3つの問いを提示します。
- 自社の応募者の中に、過去スポットワークを経験した層はどの程度いるか?
- 応募者アンケートや採用面接で簡単に確認できます。スポットワーク経験者が多いなら、給与支払いサイクルの期待値が変わっている可能性があります。
- 現在の月1回給与支払いに、何らかの不満や離職要因が紐づいていないか?
- 退職理由ヒアリングや従業員アンケートの過去データに、給与受取に関するコメントが含まれていないか確認するだけでも、優先順位の判断材料になります。
- 給与前払い/デジタル払いを「導入する/しない」だけでなく、「どのターゲットに対して導入する」かを設計できているか?
- 全社一律でなくとも、特定の雇用形態(アルバイト、契約社員、シニア人材など)に絞って試験導入する選択肢もあります。
スポットワーク市場が1,347億円規模に成長したという矢野経済研究所の数字は、他社が動いていることを示すサインでもあります。自社の人事戦略を、いまの市場に合わせて再点検する好機です。
関連サービスのご紹介
給与前払いサービスをご検討の中小企業様には、給与日払いサービス「hibarai(ヒバライ)」をご紹介します。クレジットカード決済を活用した立替不要型の設計で、初期費用無料、雇用形態を問わず利用できる点が特徴です。導入ご相談はお気軽にお問い合わせください。
hibarai(ヒバライ)は、働いたその日に給与を受け取れる給与日払いサービスです。
hibaraiの主な特徴
- 勤務当日に給与を受け取れる
- 現金手渡し不要、口座振込で完結
- 企業はクレジットカード決済で対応でき、資金負担を抑えられる
- 給与計算・明細発行まで一元管理
現場で選ばれている理由
- 「日払いOK」が応募の決め手になりやすい
- 現金管理や手渡し業務が不要
- 急な人手確保が必要な現場と相性が良い
警備・物流・飲食など、即戦力が求められる業界では、採用スピードを上げる仕組みとして活用されています。
🏠 楽しく働くを語るラボ ➡ スポットワーク ➡ 2025年度のスポットワーク仲介サービス市場は前年比22.5%増。中小企業が今、給与制度で対応すべき3つの論点
おすすめ記事
©️ Parque.Inc